本学大学院理工学研究科機械制御システム専攻の塚越秀行准教授は災害現場で,がれきなどの中から要救助者を探し出すため災害救助用探索ロボット「Grow-hose-I」を開発した.
災害救助の現場では,人の声が届きにくくレスキュー犬でも探しづらい3~5m奥でのがれき内の情報収集が求められる.Grow-hose-Iはホース構 造を基本とし,外部と摩擦を生じることなく,複雑な凹凸面でもスムーズに奥まで伸ばすことができる.また,T字路などの分岐点で進路を選択したり,曲がり 形状を維持したままさらに別の方向にホース先端を伸ばしていくこともできる.2007年春の日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会で「狭隘瓦礫 空間内をスムーズに移動する内部繰り出し式人命探査ホース」として発表した試作機をベースに,さらに改良を加えた.
従来の探査機では,剛体棒の先端にカメラの付いた棒カメや胃カメラと同様のファイバースコープが使用されていた.しかし,複雑にがれきが重なっている中 で,棒カメは曲げられず,ファイバースコープは奥深く進むにつれて摩擦が増し進みづらくなるという欠点があった.これらを解決するために開発されたのが Grow-hose-Iである.これは,機器全体が動く従来の探査機の動作原理とは異なり,植物の根の成長過程と同様に,先端から生えるように進行するた め,摩擦を著しく軽減できる.その上,目標方向に能動的に曲げられる機能も備えている.
Grow-hose-Iは図1のように,1つのカバーの中に,2本のへん平チューブと,それぞれに張力をかけるワイヤーを付けて収めた構造となってい る.チューブ内に圧縮空気で圧力をかけると先端部分が伸びる.さらに,形状を維持しながら湾曲するために,カバー外部に金属枠が一定間隔毎に取り付けられ ている(図2).Grow-hose-Iの先端の進行方向を変えるには,2つのチューブにかける圧力とワイヤーの張力を制御する.湾曲形状を維持するに は,加圧されたチューブでカバーを金属枠に食い込ませ,湾曲内側に生じたカバーのしわを保つ.一度しわが寄った部分は全体を縮めない限りその曲がりを維持 でき,さらに先端部だけを伸張できる(図3).この構造と制御方法については特許を申請している.
現在のGrow-hose-Iは60ミリの管内に入れられる大きさで,50ミリの曲率半径で曲げられる.直線では3m程度伸長でき,途中3~4回程度湾 曲することも可能である.カバーの素材を変えることで,さらに長い距離の探査をできる.また,先端にマイク付きカメラを装備して情報収集も行える構造と なっている.塚越准教授によれば,このようなホースの進行原理は,災害時の要救助者探索だけでなく,下水道内やガス管内の配管検査,あるいは,さらに小型 化できれば胃カメラなどにも応用できると考えている.
![]() | ![]() | 図3)Grow-hose-Iの動き(動画) |
図1)Grow-hose-Iの構造-先端部が伸びるメカニズム | 図2)Grow-hose-Iの構造-湾曲するメカニズム |
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