本学大学院情報理工学研究科 中島 求 准教授,同研究室学生,慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 仰木裕嗣 准教授および同研究室学生らの研究グループは,ウエアラブルコンピュータとPCソフトウェアからなり,カメラなしで水泳中の泳ぎの動作を計測・表示でき る,競泳トレーニング用結果表示システムを共同開発致した.
現在,トップレベル選手の近代的な競泳トレーニングにおいては,水中で手がどのように水をかいて推進力を得ているか,すなわち泳ぎの動作の把握が非常に重要である.このため,従来は,主に次の2種類の方法が行われてきた.
(1)一般的なハンディビデオカメラを水中用パックに入れ撮影する.
(2)2台の水中固定カメラをプールに設置して,三角測量の原理により,選手の体の特徴点(関節など)の三次元座標をコンピュータにより算出する(このようなシステムは三次元動作解析システムと呼ばれている).
しかし,(1)の方法では正確さに欠け,(2)の方法では(1)よりはずっと正確であるが,それでもトップ選手の好調時と不調時の違いなどの微妙な差を計 測するにはまだ精度が十分とは言えず,また,設置,撮影,および撮影の後処理(ビデオフレームの1画面ずつ手動で特徴点をマウスクリックしていく処理)す べてが非常に大掛かりで,普段のトレーニングで気軽に用いることはできなかった.
上記の問題点を解決すべく開発された本システムでは, カメラは一切用いず,以下の図1,図2に示す,選手が手首に装着する腕時計型のウエアラブルコンピュータが選手の泳ぎの動作を計測する.本ウエアラブルコ ンピュータの心臓部は,マイコン,動作計測用3軸加速度センサ,データ記録用Flashメモリー,データ転送用無線モジュールを1円玉大の大きさに収めた メインチップである(図3).
さらに動作計測用の3軸ジャイロセンサとバッテリーを防水ハウジングに収め,腕時計並みの大きさを実現した.本ウ エアラブルコンピュータを手首部に装着して泳げば,泳いでいる際の手首部の運動が計測され,ウエアラブルコンピュータ内のメモリーに記録される.ただし計 測されるのは3軸の加速度・角速度の時系列信号であり,それらの信号を選手やコーチにわかりやすい形で提示する必要があるため,本システムでは,計測デー タをトレーニング後に陸上のPCに無線転送し,計測データから求めた水中動作をアニメーションで表示するPCソフトウェアも開発した.
また,た だ動きを表示するだけではなく,中島准教授らがすでに開発している水泳人体シミュレーションモデルSWUM(スワム)との連携により,水をかいている最中 に手や腕に働く水から受ける力(流体力)を算出して表示する機能も実現した.SWUMとは,水泳中にスイマーの体の各部にどれだけの流体力が働くかを時々 刻々算出する最新の力学シミュレーション技術である.本機能により,手が発生する推進力が算出可能となり,さらに疲れてくるとどれぐらい推進力が低下する かなど,これまでのカメラ撮影だけではわかりえなかった定量的情報を選手やコーチが得ることができる.
なお,今回開発したシステムは試 作段階であり,まだ課題が残されている.まず動作復元のアルゴリズムや動作計測センサを改良し,精度をより向上させること.また,ソフトウェアについて も,実際の選手やコーチがより簡単に使えるよう,使い勝手を向上させる必要がある.しかし,これらの課題が解決されれば,本システムは近い将来の競泳ト レーニングにおける強力な支援ツールになると考えられる.
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| 図1 腕時計型ウエアラブルコンピュータ | 図2 腕時計型ウエアラブルコンピュータ(装着したところ) | 図3 ウエアラブルコンピュータメインチップ |
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| URL | http://www.hei.mei.titech.ac.jp/research/motomu/index.html |
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