本学資源化学研究所触媒化学部門の横井俊之助手および辰巳敬教授らの研究グループと東京大学大学院工学研究科化学システム工学専攻の大久保達也教授らの 研究グループは共同で,大きさの良くそろったナノメートルサイズのシリカ粒子が規則正しく配列した材料を開発した.直径が10nmと原子の5倍程度しかな い球状のシリカ(二酸化ケイ素)粒子が,サイコロ(立方体)の四隅に配置して連なる構造の材料である.触媒や機能性材料,多孔質材料の原料などへの応用が 期待できる.
大きさのそろったシリカ粒子(単分散シリカ粒子)で構成される材料を製造する手法としては,ステーバー法が知られている.この方法だと,直径が200nm~300nm程度の単分散シリカ粒子で構成される材料を製造できる.
横井助手らの共同研究グループは元々,触媒材料や吸着材料などへの応用を狙い,直径が2nm~20nmの微細な孔が多数存在する材料(メソポーラス材料) の研究をしていた.アミノ酸が付いた界面活性剤を使い,らせん状の細い孔を有するメソポーラスなシリカを合成したといった成果がある.
今回は界面活性剤ではなく,塩基性アミノ酸を使ってシリカを合成したところ,直径が10nmと非常に小さな単分散シリカ粒子が立体的に規則正しく配列した 材料を得られた(図1).すなわちまず,塩基性アミノ酸の「リジン」を水に溶かす.次にシリカの原料となる TEOS(Tetraethoxysilane)を加え,60℃で20時間ほど撹拌する.それから100℃で20時間ほど静かに置く.そして100℃で溶 媒を除去し,生成物を取り出す.さらに650℃で焼成し,最終生成物のシリカ粒子を得る(図2).
作成したシリカ粒子は大きさが極めて良くそ ろっており,また3次元的に規則正しく配列していた.このため,X線回折によって結晶と似た回折現象を観測できた.立方晶(サイコロの四隅に原子が配列し た結晶)と同様の構造をしており,1辺の長さは21nmとなる.X線回折像では結晶と同様の斑点(ラウエ斑点)が観測されている.シリカ粒子を原子と仮定 すれば,結晶格子(結晶を構成する最小単位の長さ)が通常の5倍程度と大きな立方晶とみなせる,非常に興味深い構造である.
またシリカ 粒子の間には,直径が3.2nmの微細なすき間が存在していることも分かった.そこで炭素材料をこのすき間に染み込ませて固め,後でシリカ粒子だけを溶解 させることで球状の孔が数多く空いた炭素材料を合成してみせた(図3).こういった球状の孔が規則正しく配列した構造はインバースオパール構造と呼ばれ, 機能性材料への応用が期待されている.
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図1 直径が10nmと原子の5倍程度しかない球状のシリカ(二酸化ケイ素)粒子が,3次元的に規則正しく配列した構造.シリカ粒子を原子と仮定すれば,格子長が10nmの立方晶と見なせる. | 図2 シリカ粒子の製造過程. | 図3 図1の材料に炭素を染み込ませ,規則正しく配列した球状のシリカ粒子だけを溶かすことで,球状の孔が規則正しく配列した炭素材料を製造した. |
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