要約
東京工業大学元素戦略研究センターの細野秀雄教授らの研究グループは、鉄系超伝導体物質群の中では唯一のモット絶縁体である層状セレン化合物TlFe1.6Se2(Tl:タリウム、Fe:鉄、Se:セレン)に着目し、電気二重層トランジスタ構造を利用して、外部電界の印加によって、超伝導現象の予兆とも言える金属に近い状態まで相転移させることに成功した。
今回の結果は、鉄系層状物質で初めて観察された電界誘起相転移である。トランジスタ構造を利用したキャリア生成方法は、一般的な不純物の添加によるキャリア生成とは異なり、自由にかつ広範囲にキャリア濃度を制御できるという特徴がある。従って、元素置換によるキャリア添加が不可能な物質であっても適用が可能であることから、今後の鉄系層状物質のより高い超伝導転移温度を実現する有力な方法になるものと期待される。
研究の内容,背景,意義,今後の展開等